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義務教育費国庫負担私の考え(1)中教審会長鳥居泰彦氏
中央教育審議会は義務教育のあり方について、公立小中学校教員の給与の半額を国が負担する義務教育費国庫負担制度を維持すると答申、地方団体代表は反発した。鳥居泰彦会長のインタビューを初回に、関係者の意見を紹介する。 ――答申のポイントは。 「現行通りの義務教育費国庫負担制度維持が必要だと、国民に理解していただきたい。これは子供がいる人もいない人にも重要な問題だ。人生で最も重要な9年間の義務教育期間を、国がどのように責任を持ち保証するのか。国際戦略として、質の高い教育をいかに実現するのか」 「国の負担であれ地方であれ、義務教育が税金で成り立つことに変わりはない。にもかかわらず今回は、歴史的背景や制度の内容、今後の姿など、全く国民に問いかけられないまま、政治が進んでいる。国民はもっと問題視すべきだ。 先進諸国は国が教育費に責任を持つ方向に進んでいる。英国は来年から全額国庫負担だし、連邦政府の支出がなかった米国でさえ、今や7%超を支出する。なぜ、日本だけが後ろ向きに走らなければならないのか」 ――歴史的背景とは。 「日本の義務教育が始まったのは明治五年(1872年)。人口3千万人の時代に1万2千近い小学校が誕生した。教育への関心は高かったが、授業料を取ったため、就学率はわずか20%だった。明治後期に教員給与費に対する国の財政保証制度が整備され、無償制が確立。明治38年(1905年)には、就学率は95.6%に達した。義務教育の貫徹には無償制が重要だと明治の先達は気付いていた。 大正から昭和にかけ、義務教育費を国と市町村のどちらが負担するか激しい議論が行われ、昭和15年(40年)に義務教育費国庫負担法が成立した。戦後一時期廃止されたが、地域間格差が拡大、地方の要望で昭和27年(52年)現行の負担法が成立した。 小泉内閣になって三位一体の改革が始まり、全国知事会は義務教育費国庫負担制度を取り上げた。なぜ知事会が選ぶのか、理解できない」 ――地方への税源移譲は何が問題か。 「三位一体の改革は国から地方への税源移譲。だが、国民から見れば、どちらも税金。払い先が違うだけだ。国税の抜本的減税をしない限り、地方税は上がる。今、個人住民税の税率は5%、10%、13%の3段階だが、納税者の約66%は税率5%だ。言われるように、税率を一律 10%にすれば、約66%の人は2倍に増税になる」 「負担制度を廃止すると、地方により教育の財政負担能力に大きな格差が出る。一般財源にすると教育以外の目的に使う可能性が出て、さらなる格差拡大は明らか。それなら国税で担う現行制度の方が、教育水準の全国平準化を維持できる。 試算では、一般財源化すると40道府県で財源が不足する。地方交付税ではとても賄えまい。交付税総額の削減は、三位一体の改革の大きな柱だからだ」 「図書費、教材費、旅費、退職金などはすでに国庫負担を廃止し地方に移管してしまった。図書費を見ると、1校当たり年間70万円の都県から20万円まで、地方間格差が非常に大きい。教育を地方に持っていく危険性がわかる。 三位一体の改革は間違いではないが、義務教育は社会の根幹だ。そのことを政権担当者は深く理解してほしい」 ――図書費や退職金などが次々と一般財源化され、義務教育費総額に対する国の負担は三割以下だと地方側は主張する。 「それは確かだが、文科省が好きで地方移管したものではない。財政緊縮の折、なし崩し的に地方に持っていかれたのだ。今回の結論は、あくまでも現行制度の仕組みの中で考えたときの最善の方法だ。将来、考え方を変えて再検討するときは、全額国庫負担も検討されるべきだ」 ◆「1―3」間違い ――様々な妥協案が水面下で模索されている。「2分の1の国庫負担を、3分の1で妥協するような考えは間違い。義務教育費は国が負担すべきだと国民が心の底から判断し、立法府が問題解決することが正しい。 負担制度廃止は地方六団体の総意と言うが、昨年と今年で全市町村議会の65%に当たる1429議会が、負担金堅持を求める意見書を出した。民意が制度堅持にある証拠だ」 ◆首長に誤解も ――負担制度が中央集権的な文教政策の元凶だという指摘もある。 「文科省には監督行政が残っており、改めるべきだ。だが国庫負担制度に関しては、地方が指摘する、はしの上げ下ろしまで指図するとか、円筒形の上意下達型行政といった事実はない。中教審の議論で否定された。 文科省を批判する首長には誤解もある。県教育委員会が、県の地方事務所を通じて下ろしてくる通達や指示のすべてを、文科省が出していると勘違いしている」 ――答申には、全国学力テストや教員免許更新制など、委員間に異論が多い問題も盛り込んだ。 「意見が分かれるかもしれないが、徐々に解決していく。中教審の各部 会で慎重に議論したい」 ――政治決着で答申が否定されたら、中教審は威信を失い、審議会制度の転換点になるのでは。 「会長の私の威信を論ずるのはよいが、組織としての中教審には関係ない。審議会の役割は今後も変わらず、重要になる。専門家や教育の実務者、良識人の集団が政策提言する審議会は、良くできた制度だ」 「今回の動きは、長い歴史のうねりの一つ。右に振れたり左に振れたり、国が持つべきものを地方に持たせたりまた国に持たせたり。これを正しい道に戻すのが政治であり、国民の力である」 (聞き手は編集委員 横山晋一郎)
by sankosha
| 2005-11-15 16:49
| 営業雑談
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